僕はポラリス。世間からはもうすっかり忘れられた存在だ。

その昔の僕はこれでも人気があり、多くの人間から愛され、航海の道標としても

重宝がられた存在だったんだけどなあ。僕の若い頃はよく明るさを変えたこともあったから、

２等星でもかなり脚光を浴びたのに、そんな時代ももう遠い過去の話になっちゃったな。

やあ、カノープス君今晩は。寒くなったね！？

地上界では梅が咲いているらしいけど、やっぱり冬はバラ星雲見なきゃね！

君に会える時は絶対バラ星雲見るようにしているんだ。

しばらくぶりだけど、元気だったかい？　ああ！

君は人気あるねえ。みんな君に会えるだけで長生きできると信じているから、

この極寒の季節でも夜空を見る人間が結構いるんだよな。君を見つけるために。

カノープス君、この時期、君はみんなの注目の的だね。

そりゃそうさ、人間は誰だって長生きしたいから私に会いたがる。

私は君と違ってそうやすやすと現れないから、余計に注目されるんだ。

おまけに君とは明るさも格段の差、全天でシリウス君についで二番目だからね。

ポラリス君、君は昔あんなに好かれてたのに、どうしたんだい。

元気がないね。

時代が僕を要求しなくなったのさ。僕は所詮２等星だしね。

どうせ僕なんかより、12000年後にここに君臨するベガさんの方が美しいから、

人間はそちらに関心を寄せているに違いない。

ポラリス君、そんなことないと思うよ。

最近見たテレビドラマで君の事が紹介されてたよ。

「今度道に迷ったら、まずポラリスを探すといい。」

「他の星がみんな動いてもポラリスは同じところにあるんでしょう。

もし他のみんながユジンさんを許せないと言ってあなたのもとを去っても、

僕が同じ場所で待っていたら道に迷わないよね？僕を信じてくれますね？」

冬のソナタのドラマに君のことに触れているシーンがあったよ。

「えっ！ホント！」なんでも高視聴率だったらしいよ。

へえ！ドラマでねえ。

くさい台詞だねえ。人間界では女性を口説くのに僕のことを使うのかい！

でも世間では、少しは君のことを思い出してくれた人も多いんじゃない！？

そうだといいけど・・・・。

でも僕の使命はあと2500年。

後はエライさんに任せればいいわけだから、それで僕の使命は終わりだよ。

ああ、君とはもっと色々話したいことがあるんだけど、もう沈んでしまうのですね。

冬場は晴天率が高いから、また明日も会えるかも。

それじゃカノープスさんさようなら・・・・・。

そうだいいこと思いついた。

やっぱあれしかないだろう。

さそり座のドシュバ男爵のように、気がつかれないようにそっと明るくなって、

気がつけば1等級なんていうのも悪くはないかな。

でも待てよ！僕にそんなエネルギーはもうないから絶対に無理やしなあ・・・・。

そうだ僕は超巨星であることすっかり忘れていたなあ。

こうなったら太陽系に進路を変更して32光年まで接近すればいいんだ。

そうすれば-4等級の金星よりも明るく輝くことになる。

ようし進路を変更しよう、驚かせてやるぞ！

今からだったらエライさんにバトンタッチする前に間に合うぞ！

よっしゃ元気が出てきたぞ！

終わり

注記）エライ　：ケフェウス座γ星

　　　ドシュバ：さそり座δ星

2004/02/08

きらぼし